2つの超速効型インスリン製剤「ルムジェブ」と「フィアスプ」について

  • 2025.09.20

糖尿病治療では、食後の血糖値をコントロールすることがとても大切です。 そのために使われるのが「食直前インスリン」と呼ばれる超速効型インスリンです。今回は、近年登場した新しい製剤 「ルムジェブ」 と 「フィアスプ」 についてご紹介します。 いずれも吸収を早めるために、添加剤を変えて効果発現までの時間を短縮しています。

ルムジェブ(Lyumjev)

• 従来のヒューマログ(インスリンリスプロ)を改良した新しいお薬です。

フィアスプ(Fiasp)

• ノボラピッド(インスリンアスパルト)を改良したお薬です。

従来のインスリンとの違い 従来の超速効型インスリンは、食直前注射が基本なのですが、インスリンの効果発現が血糖上昇に追いつかない事が結構あります。このため、CGMを見ながら、患者さんと相談して、食事の10分から15分ぐらい前に注射をして、血糖上昇のタイミングと効果発現のタイミングを合わせる事がよくあります。 一方で、ルムジェブやフィアスプは 効果発現までの時間が5分ほど早くインスリンの切れもいいというデータがあります。下のグラフでは、ルムジェブとフィアスプが立ち上がりが早く、また食後の血糖値の上昇が抑えられています。

「従来のインスリン(ヒューマログ、ノボラピッド、アピドラなど)」と「新しい超速効型インスリン(ルムジェブ、フィアスプ)」、一体どちらが良いのでしょうか?

答えは「人それぞれ」です 。新しいインスリンは、従来型に比べて効果の出始めが早いため、

• 食事の直前にしか注射できない方

• 朝食後、昼食後の血糖が上がりやすい方 にとってはメリットが大きいです。

一方で、従来型インスリンは • 脂質やタンパク質が多い夕食など、消化吸収がゆっくりな食事に合っている という利点があります。

実際の例

• Aさん:1型糖尿病、9時〜18時まで仕事

• 食事のリズム:

朝7時(パン+コーヒー)

昼12時(社食)

夜19〜20時(ご飯+おかず)

変更前 すべて従来型インスリンを使用。

• 朝:炭水化物主体のため、食後高血糖が出やすい

• 昼:社員食堂で食べるのでインスリンの投与は食直前になりがち → 食後高血糖が目立つ

• 夜:夕食が遅いと、食前低血糖が起きやすい

変更後 • 朝・昼:ルムジェブに変更 • 夜:従来型を継続

結果:朝食後の高血糖、昼食後の高血糖は改善、夕食前の低血糖も軽減しました!

大事なのは生活のリズムに合わせたインスリンを選択し、どのタイミングでインスリンを投与するか、です。

当院では、患者さん一人ひとりの生活スタイルに合わせたインスリン治療を一緒に考えていきます。お気軽にご相談ください。

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